炭火の香りと出汁の温度で魚介を二度味わう
魚を焼肉スタイルで炭火にのせるという発想が、この店の入口になる。高松・瓦町に2025年12月18日オープンした出世魚は、鮮魚を「焼く」と「出汁でしゃぶしゃぶにする」という二つの食べ方を一軒で体験できる海鮮居酒屋。マグロの濃い脂が炭火で弾ける音、タイの薄切りが出汁にくぐった瞬間にふわっと甘みを帯びる変化——同じ素材でも温度と調理法が変わるだけで、まるで別の料理になる。個人的には、焼きと出汁しゃぶを交互に口に運ぶリズムが予想以上に楽しかった。
魚しゃぶしゃぶは1人前7切れの構成で、旬魚の盛り合わせを頼めば一皿で数種類の切り身を試せる。食べ終えたあとの出汁に魚介の旨みが溶け込んでいて、締めの出汁茶漬けまで含めて一連の流れとして設計されている印象を受ける。「焼肉のつもりで来たのに、しゃぶしゃぶのほうが忘れられない」という声もちらほら聞こえてくるらしい。どちらに軸足を置くかで、訪問ごとの印象が変わる店だ。
予算とシーンで分かれる3つのコース構成
魚焼肉コースは8品7,500円、しゃぶしゃぶコースが6品6,000円、両方を盛り込んだ特別コースは9品10,000円。飲み放題の追加にも対応しているため、宴会から接待まで場面を選ばずに使いやすい価格帯に収まっている。出世魚のコースはいずれも「焼く・出汁でくぐらす・出汁で締める」の三段階を組み込んでおり、食事の起承転結がメニュー側で設計されている構造。鯛やサーモン、鮪といった鮮魚の旨みが最後の出汁茶漬けへ集約されていく流れは、食べ進めるほどに満足度が上がる。
6,000円のしゃぶしゃぶコースを2名で注文した場合、出汁の味が中盤から明らかに変わり、後半は魚介の風味がかなり濃くなる。この出汁の変化そのものがコースの仕掛けになっていて、追加の鮮魚を頼んで出汁を「育てる」常連もいるという話を耳にした。10,000円の特別コースでは焼きとしゃぶの両方を一席で行き来できるため、接待のように話題が必要な席との相性が良さそうだ。品数の多さだけでなく、食べ方の選択肢が増える点に値段分の納得感がある。
小鉢とアラカルトが支える長い夜の時間
出世魚はコース主体の店に見えて、実はアラカルトの層が厚い。生タコキムチ、酒盗、なめろうといった酒の肴が並び、雲丹やいくらを使った小鉢まで揃う。出汁の風味をしっかり含んだだし巻き卵や、鮮魚のユッケ、炙り系の一品も日本酒との組み合わせに向いている。少しずつ頼んでは飲み、また頼むという使い方ができるメニュー構成になっている。
旬の素材を反映したメニューは時期によって入れ替わるため、同じものを頼もうとして品書きから消えていることもある。「前回あった雲丹の小鉢がなくて残念だったけど、代わりに出てきた炙りが良かった」という声が目立つ。こうした季節の入れ替わりが再訪の理由になっているようで、常連ほどアラカルト中心に注文する傾向があるとのこと。
瓦町駅徒歩5分、深夜帯は出汁茶漬け専門に切り替わる
高松琴平電気鉄道琴平線・瓦町駅から徒歩5分の立地で、営業時間は17時30分から23時30分まで。水曜定休、店内は全面禁煙で、ネット予約・電話予約の両方に対応している。仕事終わりにそのまま寄れるアクセスと、禁煙環境を重視する層には選びやすい条件が揃っている。2025年末にオープンしたばかりの新しい店舗で、内装もまだ真新しい空気が残る。
深夜24時から26時の時間帯は、出汁茶漬けとドリンクだけの限定営業に切り替わる。二次会の帰りや深夜勤務後に、温かい出汁茶漬けを一杯だけ食べに立ち寄る——そんな使い方をしている人が実際にいると聞いた。遅い時間帯に魚介の出汁を味わえる飲食店は高松市内でもそう多くなく、この深夜枠の存在が出世魚の名前を覚えるきっかけになっている利用者もいるようだ。


