各国の食文化を一皿に落とし込む旅するシェフの台所
中東風モツ煮込み、レモングラスを効かせた白イカの姿煮——メニューを眺めるだけで、どこか遠い国の屋台に迷い込んだ気分になる。nuiのシェフはバックパッカーとして世界を歩き回り、現地で出会った味覚や調理法をフレンチ・イタリアンの技術で再構築している。アジア、中東、ヨーロッパと守備範囲は広く、仕込みに時間をかけた煮込み料理が看板メニューとして定着した。旬の素材を選び、異なる地域のスパイスやハーブを組み合わせる手法に、一貫した料理人としての設計思想が見える。
個人的には、メニュー名だけでは味の着地点が想像できないところに面白さを感じた。「どこの国の料理ですか」と聞きたくなるような一皿が次々に出てくるので、初めて訪れた人はまず3品ほど頼んで振り幅を試すのが良さそうだ。ハーフサイズの提供もあり、一人でも4〜5種類を少しずつ味見できる仕組みになっている。常連がつい通い詰めてしまう理由のひとつは、この「次は何が出てくるか分からない」距離感にあるらしい。
カールスバーグからドン・ペリニョンまで振れ幅の広い酒棚
クラフトビール、焼酎、クラフトジン、ハブ酒と、ドリンクの並びだけで多国籍バルの看板に偽りがないと分かる。ワインは赤・白・スパークリングを産地別に揃え、記念日向けにはKRUGやドン・ペリニョンといったシャンパーニュも用意されている。スパイスを使ったカクテルなど既製品に頼らない一杯もあり、料理とのペアリングをスタッフに相談すると思いがけない組み合わせを提案してくれる。カールスバーグの生ビールで軽く始めて、途中からワインに切り替える流れが人気だという声が目立つ。
nuiの煮込み料理にワインを合わせると「止まらなくなる」という口コミは複数見かけた。中東系のスパイスが入った料理には意外にもオレンジワインが合うと勧められることもあるようで、普段飲まない銘柄に手を伸ばすきっかけになったという感想も残っている。ドリンクの価格帯はカジュアルなものからラグジュアリーなものまで幅があり、予算に応じて柔軟に楽しめる構成になっている。
阿佐ヶ谷駅徒歩2分、路地裏に現れるカウンター12席の木質空間
阿佐ヶ谷駅北口から歩いて約2分、路地を一本入った場所にnuiはある。長いカウンターに12席、テーブル席は最大16席という構成で、照明を落としたモダンな内装が印象的だ。木を基調にした内装は肩肘張らない空気感をつくっていて、一人客がカウンターでシェフと言葉を交わしながら飲んでいる光景が自然に溶け込む。貸切や女子会にも対応しており、用途に応じてテーブル配置を調整してもらえる。
「近所に住んでいたら確実に常連になる」と感じる利用者も多いようで、入店時から退店時までスタッフの応対が気持ちいいという評判は繰り返し目にする。カウンター越しの気さくなやり取りが店全体のトーンをつくっている印象で、初来店でも居づらさを覚えることはまずないだろう。記念日にはメッセージプレートやサプライズ演出の相談にも乗ってくれる。
深夜2時ラストの夜更かしバルで冷菜から煮込みまで
営業は水曜から日曜が深夜2時まで、月曜のみ0時閉店で火曜が定休日。ラストオーダーは1時なので、終電を逃した後でもゆっくり腰を据えられる。季節のカルパッチョやスパイシーチキンサラダといった冷菜から、時間をかけて仕上げた煮込み料理まで深夜帯でもフルラインナップで注文できるのは、この営業時間だからこそ成り立つ形態だろう。手間のかかった料理を比較的リーズナブルな価格で出している点も、遅い時間帯の集客力につながっている。
仕事帰りに「もう一軒」で辿り着いた人が、つい料理まで頼んでしまうのがnuiの深夜営業のリアルな使われ方のようだ。22時を過ぎてから入店し、煮込みとワインで1時間半ほど過ごすという利用パターンは口コミでもよく見かける。清潔感のある店内は深夜帯でもだらしない雰囲気にならず、お一人様から数人のグループまで客層を選ばない間口の広さがある。


